August 07, 2017

んで下ろして眺


「いい眺めですね。桜をこうやって見めるなんて思いもよりませんでした。小橋先生……?」
「あのね、朔良君。僕の下の名前は旭日というんだ。あさひ。これま網路行銷で話したこともなかったけど、そう呼くれる。いつまでも、小橋先生はないと思うんだ。」
「僕たちは、色々と順番が違っている気がしますね。では、旭日さん。」
「うん。朔良君。」

二人は自然に寄り添って抱き合うと、軽く口づけを交わした。
風が冷たくはないかと、小橋が聞いた。
懐にすっぽりと包まれて、朔良は身体を預けていた。頬に当たる春風に、微かに甘い匂いを感じた。

「不思議だ。朔良君と一緒にこの場所にいると、いつもの場所なのに何かロマンチックな気分になるね。浮かれているせいかな、いつもより空も青い気がする。」
「ふふ……とてもいい眺めだから、ゆっくり見ていたいです。」
「無理をしてこのマンションを買って良かった、と今すごく思ってるよ。僕はきっとここから下を眺めるたび、この光景を思い出すだろうね。」
「来年の桜の頃にも、僕は旭日さんとここにこうしているでしょうか。」
「離さないよ。でも……ほら駐車場に車が入って来ただろう?あれね、きっとぼくの上の階の住人なんだ。ここを通るはずだけど、良君を見せたくないから、部屋に行こう。よっ。」
「あっ。」

小橋は軽々と朔良を抱き上げた。

「思ったより軽いな。」
「足に負担がかからないように、太らない方が良いと、リハビリの最初に言われました。」
「そうだけど。困ったな……壊してしまわないように、慎重に扱わないと。」

小橋は真顔でそんなことを言う。
仕事を離れると、まるで人が違ったような小橋の態度に、朔良はDPM枕頭包まれるような温かいものを感じた。告白されたばかりなのに、ずっと傍に居たかのように大切にされていると思う。
花嫁を抱き上げるように、朔良を抱いたまま小橋は階段を駆け上がった。
小橋の方も振り落とされないように、思わずしがみつく朔良を愛おしく思っていた。

*****

扉の前まで来た小橋は、躊躇していた。

「どうしました。」
「うん。……散らかってるなぁ。やばい……森本先生から電話貰って飛び出たから、片付いてないんだよ。朔良君には見せたくない。」
「洗い物も?」
「そう。コンビニで買ったチーズハンバーグを湯煎にした鍋も、流しにそのまま。」小橋は慌てた。
必死に告白して、ここまでやっと連れて来たのに、帰られたのでは苦労が無駄になる。

「待って、朔良君。すまない。直ぐに開けるよ。ただ言い訳だけ先にさせてくれるかな。いつもはこうじゃないんだよ。僕はどちらかというときちんとしている方だと自分では思ってる……どうぞ。」

重い鉄の扉が、やっと開いて朔良は足を踏み入れた。
想像通りの温もりのある空間だった。小橋の言う通り、そこまできちんと片づけられてはいないが、それでも雑然としてはいない。
仕事に懸命で、自分の事に手が回らないという印象を受けた。

「座っても?」
「あ。どうぞ。後、何か飲む?アルコールもあるけど?」
「では、ジンジャーエールを下さい。」
「ちょっと待っててね。ソファに掛けていて。」

小さなキッチンで甲斐甲斐しくグラスを用意する小橋が、朔良が座っているソファから見えた。
初めて訪れた部屋なのに、何故か心地よい。ずっと欲しかった居場所を手に入れた気がして、朔良は涙ぐんだ。
小橋に見られないように、そっと涙をぬぐったが、ずっと朔良DPM價錢を目の端でとらえていた小橋は朔良の様子に気付いた。

「朔良君。今日はゆっくりできる?」
「はい。」
「そう、良かった。疲れていなければ、夕食の買い物に出ようか?」
「作るんですか?」
「そうしたいんだけど、いいかな?一人暮らしが長いから、少しは料理もできるよ。何が食べたい?」
「北京ダック。」
「朔良君……あのね。」
「冗談です。」

顔色も変えない朔良の冗談に、小橋はふいた。

「やっぱり見栄張るの止めようかなあ。晩御飯はレトルトのカレーでいい?サラダは作るから。」
「いいですよ。でも、どうしてですか?」
「どうしてって、少しでも長く一緒にいたいからに決まってるじゃないか。」
「そうですね。来年の今頃は、きっと僕はいなくなりますから。旭日さんの言う、ぴちぴちに囲まれて……あ、それ以前に受験勉強が忙しくなるかな。」
「朔良君。小父さんをいじめると、後悔するぞ。」

Posted by: ucenico at 04:01 AM | No Comments | Add Comment
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