June 13, 2017

夕飯ほど


琉生のまだ変わり切っていない少年の声が、脳内変換されて、美和の声となって耳に届く。
昏い部屋に光が差し、逆光の妻がの支度が出来たから、下りてきて柏傲灣示範單位と少女の顔で誘う。尊と隼人は、父の言葉を待っていた。
しかし、父の口を突いて出たのは、予想もしない言葉だった。

「仕事ばかりで構う暇がなかったから、それ親として関わってはいないが、美和には大切な子供だった。」
「だった……?」

しっ……と尊が、隼人を視線で制した。
「あり……がとうございます。」

頭を下げて、そのまま琉生はロビーへと向かった。
呼ばれるように、ひき寄せられるように、琉生は父の絵の前に立った。

『琉生』

両親の眼差しが、ゆりかごに眠る赤ん坊に注がれている。名前を呼ばれたような気がした。
思わず手を伸ばし、絵に触れて微かな温もりを得ようと思ったが、パステルの絵は硝子板に閉じ込められていた。

『どうしたの?』

「お母さん……。寺川のお父さんは、お母さんが傍に居ないと駄目なんだ。」

「……お母さん……お父さんの中に、ぼくはどこにもい柏傲灣呎價ないんだ。消えちゃったんだよ……死んだのは、お母さんじゃなくて……ぼくなんだよ……」

ひくっと、嗚咽が零れた。

尊と隼人は、まんじりともしないで、琉生からの連絡を待っていた。
琉生の行方を探そうにも、何一つ浮ばなかった。
何度、ため息をついただろう。

無力な自分を責める尊の携帯に、見知らぬ番号から電話がかかってきた。
普段ならば取り上げることなどしないが、虫の知らせだろうか、思わず取り上げ「琉生?」と声を掛けた。

「もしもし……寺川尊さんのお電話ですか?慈恵大学病院、内科の看護師長、森川と申します。」
尊は、琉生は今もそうなんです……と、言いかけた言葉を飲み込んだ。

*****

「どうぞ。」

看護師に促されるようにして、尊は誰も人のいない面会室に入った。
こんなものでごめんなさいねと、看護師は自販機の缶コーヒーを尊の目の前に置いた。

「寺川さん。さっきのお話の続きですけど、琉生くんのお父さんは、この病院で亡くなったの。まだ20代だったと思うわ。」
「そうですか……。僕は琉生の亡くなった父親に関しては何も知りません。琉生は父の再婚相手の連れ子ですから。母は先日亡くなりましたが、そういった話を僕達にはしま柏傲灣せんでした。多分気を使っての事だと思います。」

Posted by: ucenico at 09:45 AM | No Comments | Add Comment
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